――アイツに、宜しく伝えておいてくださぁーいっ!!

 ……アイツは気付いていただろうか。
 その声が、たまたま体調不良で切り上げた私の所まで届いていた事に。
 ひび割れた窓と破れたカーテンのボロ屋が、私の家だった事に。
 ……部屋も相応の大惨事だ。
 破けたカーテン、へし折れた棚。
 呆れ顔で私を見ている空色ネコの一匹。
「月一で野宿でもしちゃいますすニャ?」
「あ……ジブリール……悪い。洗って来る」

 ……血の感触に伴うワルイユメ。

「シーツその他はやっておきますニャ」
 洗面所に立つ。
 薬指と小指の欠けた右手。
 左利きで良かったなんて事は無く、ただ押さえるだけが物凄く不便だ。
 水の音、血の臭い、ぬめり……。
 返り血を落とすのは平気なのに……。
 頭がぐちゃどろに沈みそうになる前に、もう一度あの声を頭に響かせてみた。
 ……少しだけ、流れる水の感触が心地好くなった。
 本当に、少しだけ……。
 たったそれだけ。たったそれだけの事で……。

「……フフ、馬っ鹿みたい」
 思いっ切り救われてる自分がいた。


   ――――From The Past』―――
          這い上がる者


 不安だった。ずっと不安だった。

 両手及び、上半身いくらかの複雑骨折。
 ご丁寧に完全治癒の望めないような形で。
 女の方は顔と内臓を大分やっていたと言う。
 ……それを、アイツがやったと……。

 確実な処刑を、死をと、そう望む故に知った事。

「やっぱ、ちょっとショックだったのかな……」
 良く言えば優しい、悪く言えば甘ちゃんのアイツがナイツになってた。
 破れたカーテンのすき間から、騎士装束のアイツが見えた。
 決して楽な世界じゃない事を知ってる。
 あの日再会したアル兄達の目付きは、少し変わっていた。
「アイツも……変わっちゃってるのかな……」
 あの声のまま、目付きだけが……。
 でも……あの声のまま……。
「血みどろパンツ握ってニヤニヤしてるニャ……」
「ちょ、ちょっと待って今洗うから!!」
 ……せーりなんて大嫌いだド畜生。

 慌てて洗ったらたら破けた……最悪。
 更に何が最悪かってーと……。
 ガチャン、ギィー……。
「な、リト、帰って来てるならちゃ……」
「チェストォーッ!!」
 水音聞いて入って来やがるこの、馬鹿アニキっ!!
 思いっきり蹴り出してやっ……あー、やべ。
「はい、お着替えですニャ」
「おう……」

 ジブがよこしてくれたのは黒いワンピース。
 ラージャンの黒毛を使った一級品。
 素材の品質対防御力は失格だが着心地はすこぶる良い。
 いやーちょっと頑張れば買えるもんだねぇ。
 アイツから借りパクしたのシャツの着心地が忘れられなかったのよ。

 着替えて外出ると外で転がってたアニキがへたり込んでた。
 心得るようなったじゃねぇか……。
 言えない。言えずにいる。そうだろうよ。
 飛竜の翼じゃあ、追いかけるの無理だしな。
 だけど、少しカマかけてみた。
「アイツ、何か言ってた?」
「いや……特には……」
 アゴ蹴っ飛ばして、露骨にドアばったーんっと閉めてやった。
 年頃の妹に頼られないからってジェラってんじゃねぇ。

 それに……。
「こんな部屋、見せられるかよ……」
 村の入り口の掘っ立て小屋。
 寝室に台所と洗面所兼手洗いがくっついてるだけの家。
 窓にはヒビ、物は散乱。
 ベッド回りに飛び散る羽毛……喰い切った枕は何個目かな。
 ちなみにコレが今朝一日の戦果だったりする。

 そして鏡に映った……。
「フ……フフ、フフフ……」
 酷い顔、髪ボサボサだし、肌荒れ放題だし……。
 見せられるか、見せられるかよこんなの……。
 化粧より効果有るだろうって、結構、頑張ってたのに……。
 あのバカ……全然気付いてくれなかっ……あれ?

――随……色気付……んなぁオイ。
――……ゃはっ……良い匂……せ……ぁ。

 ……手が……来……やだ……あれ……?
 やめ……出な……で……触、やだ、はら……嫌、わた、しの、から……。
 体……やめ……声、止ま……違う……ここは……私の家。

 膝が震える。肺が震える。声が震える。
 まともに立てなくなる。息が苦しい。極度の緊張、それに伴う動悸。
 ……こうなると、暫く動けなくなる。
 両膝を付いて、蹲ったまま。
 突然目の前に現れる連中? 幻? 手?
 幻だ、幻覚だ、言い聞かせても効果はない。
 頭は安全な家にいる状況を解っている。
 なのに、足とか、心臓とか、肺とか……他は全部別のモノを見ている。

 そんな事を考えられるのは、その感覚が通り過ぎて「戻って来られた」からに他ならない。

「ニャー……」
「う、うんジブ……だい……」
 あー……全然、大丈夫じゃ、ない……まだワタシはあそこにいる……。
 動けない。痛い。苦しい。臭い。
 ヤダ。何も出来ない。やダ。
 吐かれて、吐かれて、吐かれて……。
 やだ。何も出来ない。ヤだ。何も出来ない。

 体が一切の抵抗を止める。
 頭が一切の思考を止める。
 刃物がちらつく。恐怖は無かった。

 ワタシハココデクワレテコロサレル。

 ……恐怖はそこで終わる。
 ランポスに、腹から喰われていくアプトノスを見た事がある。
 思うより大人しかったのを、奇妙に思った。

『本当にもう駄目になると、頭が一切の現実感を拒否するんだって』
『じゃあ、仮に人が食われてたら助けない方が幸せか?』
『……ダメだと思う。俺が見てられない』
『逆立ちしても勝てない相手だったら?』
『気を引いて逃がすくらいの機転は。手を引いて、担いで、逃げられるぐらいの足は』

 ……思い出すのは何気ない会話。
 抜けるような青空。緑の草原。都合よく消されたレウスとその獲物……。
 何もかも色鮮やかに描けるようになった風景に生き物の姿は無い。
 寒冷気始めの心地よい空気も、横に立つアイツの気配も無い。
 感覚だけが蘇るフラッシュバックと、丁度逆。
 せっかく聞こえた声を加えようとしたら、途端に嘘っぽくなっちゃった。

 もうアプケロスのモツ程度じゃ怯まない。
 ディアに轢かれた程度じゃ折れない。
 ……強くなったと、思っていた。

 違った。

 鎧が強くなっただけ。ガードが上手くなっただけ。
 誤魔化し方が上手くなっただけ。
 フラッシュバックが突き付けるのは、恐怖という感情だけ。前後など関係ない。
 慣れない。恐怖も屈辱も、絶望さえ色褪せない。
 その終わりを……おそらくはアイツを意識しだした頃に繋げるのはせめてもの抵抗。
 でも、同じ景色にはいい加減慣れてしまった。

 いっそ現実逃避の一環であの時の気持ちが入ってくりゃ、良いのに……。
「お目覚めになりましたかニャ?」
「ぁん?」
 気がついたらベッドに寝かされていました。
 どうやら本当に別世界に飛んでってしまっていたらしい。
 つーか力有るなお前。

 新しい布団はフカフカだけど、生憎今日は二日目。
 極力ケツを据えたくない日で、その理由は先程証明済み。
「……適当採集ツアー行くわ」
 耳に付っぱな守りのピアス。
 髪はそのまま、軽く櫛で鋤くぐらい。
 ……お下げ? この指じゃ面倒だ。

 服の上から着るのは左右で素材の違う胸当てと肩当て。
 右は火竜の鱗、左は鉄板と見紛う加工のされた黒ディアの甲殻。
 あの頃アイツが着ていたハンターUシリーズ……まだ揃いかな。

「ひょっとして、彼が例の人ですたニャ?」
「ん……アレじゃあ、約束意味無いかもねぇ」
 あの一件で被害を被ったのは、なにも人間だけじゃない。
 例えば、普段救助に当たるネコ共はどうしたのか、とか。
「立派な公務員ですニャね」

 このジブリールもそんなとばっちりネコの一匹。
 会うことがあってもアイツに言うなってのが雇用条件だったのに。
 何でって? ほら、凹みそうじゃんアイツ。

 手を変え品を変え……場合によってはネコまで喰わせてのうのうと仇討ちの報告……。
 あぁ……殺り直してしまいたい。あの時捕まえた下っ端だけでも。
 あの時掬い上げた足をへし折って、脚の動脈なんて外して一切れずつ。
 手足を開いて腹を開き、臓腑を引きずり出して。
 目から光が消えるまで、体から血が尽きるまで。
 その存在から、生きた証まで、何もかも踏み砕いてしまいたい。

「ニャ……あ、あの……?」
「え、あ、あぁ、うん。行こうか」
 ……こんなの思い浮かべられるならって、そう思ったんだよ。
 切り落とした肉の断面も、開いた臓腑も生々しく思い浮かぶ。
 本家に見せりゃデタラメもいいとこなんだろうけど。
 つーか途中で死ぬよな。

 ……仕事出来るほど良くなったんじゃない。
 兄貴と生活する事を拒んだ私は、働かざるを得なかった。
 裁判費用の為じゃないだけ、幾分マシ。

「そろそろオーバーホールも終わってるかね」
「自分で出来るようなっといた方が良いんじゃないですニャ?」

 裁判で争うために金を稼ぎ、金を稼げると言う事実で傷を浅く見られる。
 食う元気があると言う理由でパンを取り上げるようなもんだと思う。

「……後で説明書もらうよ。手取り足取りはまだダメだ」
「すいませんですニャ」
「いいよ、気にすんな」

 悲惨な目に遭った人間が笑ってならぬ道理はない。
 恐怖の痛みが癒えたなら、意中の相手に夜這いをかけたっていい。
 ま、その後どうなるかとかは自己責任だけど。
 他で戦ってる連中の邪魔にさえならなけりゃ……頭では解ってんだよ。

 どっごぉー……ん。
 寒冷期、砂漠に響く、砲撃音。字余り。

「ここは私のシマだぁーっ!!」
「カリ〜っ!」
 ガンスでザザミ虐めて、憂さ晴らししたっていいじゃねぇの。
 砂漠にゃクック先生いないから、登竜門は大体こいつ。

 今ぶっ放したのは討伐隊正式銃槍の竜撃砲。
 銃槍にギルドの紋入りの盾。ま、ガンスつったら真っ先思い浮かぶ形なんじゃね?
 片手剣? あんなちまくて軽いの性に合わねぇ。
 指はどうしたって? 盾は全身で扱うモンだよ。
 大剣の一撃は恋しいが、こいつはこいつで趣味に合ってた。
 と、言うわけでだ。そろそろトド……。

 ――ザザミは傷つき逃げ去ったようだ――

「……あれ?」
「逃げちゃったニャ」
 竜撃砲の爆煙の晴れた先、砂漠の向こうに小さな砂煙を残して……。
「あーっ、またかぁーっ!!」
「別に採集ツアーニャんですから……」
「うるせぇーっ!! 何度邪魔されたと思ってんだぁーっ!!」
 ああそうさ最初は生活の為だったさ!!
 採掘中、剥ぎ取り中、休憩中出てきちゃ突きやがるもんだから。
 上位の採集ツアーなんて村から一日半かかるから討伐もねぇしよぉ〜。
「あーっ、ムカツクーッ!!」

 コレがアタシの日常。

 兄貴含む異性と二人きりにはなれなくなったから一人暮らし。
 生活と憂さ晴らしを兼ねて獲物を狩る日々。
 復帰一年を数えるけど、狩猟中にフラッシュバックが起こったことはない。
 戦っている間は、何かを探している間は、何も考えなくて済むからか。
「さて、ドラグライトは今何個?」
「五個揃いましたニャ」
「んじゃ、次は上竜骨だね」
 ゲネポの骨と思って乱獲したのはまた別な話。
 ま、いいよな。アイツらに狩られるとエグい事なるし。

 んで、目的を果たしたらとっとと帰る。でないと余計な事考えちまう。

 昔は馬車に揺られて高いびきだったっけ……今じゃもうさっぱり。
 代わりにベッドが恋しい。
 どんな悪夢を見ても、安全な寝床と言う刷り込みには抗えない。
 だからまだ用事が有る時は、その悪夢を言い訳に誘惑を断つんだ。

 砂漠のほとりの森は、昼の熱を逃がさない。
 だからこそ許される雪獅子製のシーツに布団。
 時に、自分の体温すら苦痛になる事があるから。
 その横のアイテムボックスの片隅、耐熱容器に転がっている紅蓮石。
 昔に掘り出して、結局使わず終いだった物。

「一昨々日オーバーホールで今日強化。過労で倒れちゃうニャ」
「構うもんかあんなセクハラ野郎」
 マジにドツき倒して事情を話してから収まったけどよ。
「整備不良でドッカンと……」
「あー、そりゃ勘弁」

 で、そのまま鍛冶屋に直行したが……店主がいない。
 氷結晶製やらを初めとした氷属性の武器が立て掛けられた応接室。
 水属性のモンは蒸すって私がドツ……もといアドバイスして片付けさせた。
 適当な一本抱えて待ってようかって思った頃だ。
 カウンター……正しくはその裏にある地下の作業場へ続く階段から白いバンダナ。
 続いて出てきた茶髪にとんがり耳に開いてるかどうかも解らない糸目。
「やぁ、りっちゃんか」
「珍しいね、仕事中?」
「や、ちょーっとね」
 と、鍛冶屋がつつく窓の外。

 女の子がいた。杖を持ってた。地面を支える部分がネコの手。
 なんだありゃと思ってたら、杖の影に、有るべき物がない事に気付く。
「轟竜にやられたんだと。断面が綺麗だからそれだけが救いかな」
「……綺麗?」
「ああ、膝下から先が酷くて、切り落とすしか無かったそうだ」
 だよな。私もツラは拝んだがそんなお行儀良いようには見えなかったし。
 その時ガンス練習中だったから、相手するのは危険すぎた。

「で、いつ頃の話?」
「一昨々日だよ。ほら、リトーシャさんのお宅はどヘブッ!?」
 反射で鳩尾に肘鉄食らわせてた。やべーやべー。
 あの黒服……今度来たらぶっ殺してやる。
 声は覚えたからな、アイツとセットで。
 で、うずくまったソイツの背にジブが乗る。

 それはともかくとして……。
 地面はネコの手、棒は明らかに竜の骨。
 見るからに即興で作ったろう、妙な可愛さのある杖。
 その作者は誰だろう。
 その意図は何だろう。
 きっと笑顔をと思い、その子の顔に目をやると……。

 思いきり、脂汗かいてねぇか?

 杖で負担か? それとも、傷がまだ?
 ああそうか、そうだよな、切断だもんな……。
 指を持ってかれた時の痛みを思う。
 あの日竜に踏まれ、ひしゃげ、欠けた右手の指が疼く。
 そうだよな……切断だもんな。それも、体を支えなきゃいけない所の。
 痛くない訳、無いよな。

――ダメだと思う。俺が見てられない――

「ちょっと行ってくるわ」
「はいですニャ」
 玄関へ向かおうとした視界の端で、その子が倒れるのが見えた。
 バカ単純に、声をかける理由が出来たと思った。
 けど……声をかけてられる状態でも無かったな。
「痛い、のか?」
 見るからにに痛そうにしてるのに、必死で首横に振ってんの。
 とりあえず近くの……って、鍛冶屋か。
 背負って、つれてって、セクハラをもう一眠りさせて、座らせてー……。

「どこが痛い?」
「……足」
 や、そりゃ見りゃ分かるって。
 出してもらう訳にはいかないから、膝に近い所から下へ触って確かめていく。
「ここ?」
「もっと下」
 あ、セクハラはまだジブ尻の下な。
「ここ?」
「もっと」
 え、いや、ここからもっと下って……。
「無い……ぞ?」
 断面を覆うように巻かれた包帯、その下。
 振れる真似事をしてみたけど、触られてる感じはしないと言う。
 目を閉じた状態で触らせて見たら、やはりその手は空を彷徨う。

 その子の目に、怪訝な顔した自分が映ったような気がした。
 それはきっと、そのこの目が潤んでいたからと言う事にした。
 私は、眉一つ動かしただけ。私は……酷いことをした。
「だから、言わなかったのか?」

――なあ、りっちゃん、キツイ事を、聞く事になるんだけど……。
――僕達、知らなくちゃいけないんだ。誰にも同じ思いをさせたくない。
――いいよ。その代わり、奴らの全てを暴いて、処刑台に突き出して。

 私は幸せだったと思う。
 罪を暴こうとする人達は、知る事も叶わないだろう痛みにあらん限りの配慮をくれた。
 私の側に居てくれた人は、悪いモノに捕らわれないよう沢山の話をしてくれた。
 そして痛みを知ったとき、私が信じた通りに怒り……。

 幸せ過ぎたと思う。
 だから離れた。そんな人達に傷を晒して、苦しめるような事はしたくなかったから。
 痛みは消えない。
 けれど、その記憶の溶け込んだ時間の流れは、慣れを教えてくれた。
 罪を明らかにする、そのために苦痛を掘り返される人がどれ程いるか。
 それを免れた事を、この上なく幸せに思う。

 そして、愚かだと思う。
 こうして苦境に陥ってる人間を見て、その事にやっと気付くのだから。
「……お姉ちゃん?」
「ん、何でもない」
 やべ、やべ、やべ、泣いてたりしないよな、しないよな?
 今は本題を考えよう。はてさて、どうしたモノか。
 根本は下手にさすれないし……つか、傷口まだやばくねぇか?
 と、ポッケに黄色い染みが。強走薬飲んで無茶しやがってたな。

――ダメだと思う。俺が見てられない――

「参ったね……」
「ナイトの人が言ってた、痛むことがあるかもしれないって……」
 あの馬鹿野郎、知ってやがったな。
 不安にさせまいと黙って、症状出たらお医者さん行くだろうって。
 想像つかないよな。消えたはずの足が痛むなんて。
「その人が言ってたのが、多分コレだよ。大丈夫、疑われたりなんてしない」

 ……所詮この世は弱肉強食。力が強いか頭が回るか。
 もしも劣る者が生き延びたなら、それは当事者同士の運と縁。
 けれど、磨き上げた力を下地に、縁と運を手繰ろうとする姿は……。

 ――大好きだった。

 私はこの子を助けたい思う。
 私の指はもう痛みを訴えない。それ以上に深刻な痛みがあったから。
 けれども……いや、ハンターである以上、同じ苦痛はすぐ側にあるかもしれない。
 そして何より、今ひとたび生きる糧をくれた、アイツがその足で助けた子だったから。

 その子を病院へ送り、帰りにガンランスの強化を依頼する。
 鍛冶屋のすぐ向こうには小市場がある。
 外の商人としのぎを削る場ではない、遠出組の戦果披露の場とでも言おうか。
 随分遠出していたのが帰ってきたらしい、かなり賑わってた。

 ……。

 その翌日、私は砂漠にいた。
 ハンターになって初めて、自分の利益を度外視した狩りに出かけたのだ。